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カンヌに行ってみて(結果の感想)
各所でレビュー的なことはおこなわれているので、受賞作などなどの紹介はそちらにゆずって、ここでは私の感想を書きたいと思う。
まずはアワードから。
ここ数年の「ソーシャルグッド」という流れはますます強く、というかそういうものでないとゴールド以上は厳しいのかな?という印象だった。正直、アワードの結果がわかるにつれ、息苦しいなあと思ってしまった。世界中のアドパーソンが世界中の困ってる人探しをしてるのだなあとか。なんというか、生真面目というかおりこうさんなのだ。ソリューションにはユーモアが感じられるんだけどそもそもイシューが真面目なのでその印象が強くなっちゃう。
あと、「広告」祭でなくなってアイディアを審査するってことになったからか、エントリー用の説明ビデオの尺が短くなる傾向だからか、ケースの紹介の仕方が提案時の企画書っぽいというか、実際に人を動かした接点の表現がどういうものなのかが不明なものが多かったことも、真面目な印象につながっているのかもしれない。
関連して、「ソーシャルグッド」がブランドの好印象に寄与するのはわかるんだけど、プロダクト(サービス)の売上に寄与するんだろうか?という疑問も日々強くなっていった。特に日本では、どうなんだろうと。もちろん、そもそもカンヌってさ、という議論は置いといて、ですよ。
こういう疑問を抱く中で、セミナーで気になったのが、これまた各所で触れられているR/GAのもの。Acceleratorという取り組みをおこなっており、スタートアップ企業に投資しながらブランドビルディングを手伝うということを始めていて、そのスタートアップの事業内容そのものが今回いくつも受賞している。「ソーシャルグッド」な活動を既存ブランドにくっつけるのではなく、「ソーシャルグッド」な取り組みそのものをプロダクト化するという行為。これまでもNike+やらのプロダクト開発にも参加していたR/GAがクライアントそのもの(の一部)になっていってるんだなあと感心した。CP+Bも自前でラムを売り出したりと、自らの「クライアント化」を進めているそうだ。こうした動きは、既存ブランドの投資で問題解決する「ソーシャルグッド」はクライアントの売上にリターンするのか?という問いから自由になっている。ブランディング力という広告会社の資産の活かし方として、これからのひとつのカタチになっていくだろう。
もうひとつの流れ、というか、どちらかというと揺り戻しなのかもしれないが、私を安堵させてくれたのは、最終日、しかもほんとのラストのフィルムの受賞作たちだった。フィルムクラフトですら、ソリューションのドキュメンタリー的なものが受賞してたりしてて、うむう、という感じだったのだけど、フィルムの受賞作は、それそのものが人の心を動かすなあと。広告っていいなあと。素直にそう思わせてくれるものであった。
当たり前だが、フィルム部門には、説明ビデオがない。見えるフィルムそのもののチカラこそすべて、なのだ。人を動かすのはアイディアそのものではなくて、実現されて表面に見えるもの、なのだということを思い知らされた。そしてそれは、もともと広告(会社)の持つブランディング力の根幹のはずである。
まとめると、注目したい流れは、ひとつが、ブランディングという強みを活かすという視点での広告会社の事業領域の拡大。もうひとつが、実際に人を動かす接点での強さがあってこそのブランディングだという原点回帰。というのが私が今年のカンヌの感想でした。
※現地に行ってセレモニーに出席してゴールド以上のものを見てのものなので、まだシルバー以下の傾向はわからないけれど、全体の印象ということでご覧いただけると幸いです。