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2017 Jan.30

「で?」の効用

先日、初めて書いた書籍「届くCM、届かないCM」(横山隆治さん大橋聡史さんと共著)が発売された。

 

この中で、ニールセン社の脳波測定による広告効果測定法「ニールセンニューロ」について紹介しているのだが、CMのVコン(企画段階のビデオコンテ)を調査対象者に見せて脳波を測定した場合と仕上がった完パケCMで測定した場合との結果が同様になるという点が(大橋さんも私も)気になっていた。なんでだろう?と。

 

美は細部に宿るはず、である。
人の心を動かすのは映像のクオリティではないのか。
そうでなければわざわざ予算かけて撮影やら編集やらやらんでVコンをそのままオンエアすればよいではないか。

 

いかん、そんなことになってしまっては、TOMOGRAPHもおまんまの食い上げだ。つーか、広告業界が大変なことになってしまう。

 

てなわけで、ニールセンのみなさんとランチした時に、質問してみた。

 

同じように脳が反応する理由、それは、Vコンと完パケは、シナリオの構造が同じだから、だそうだ。人にとってCMは単なる視覚や聴覚の刺激ということを越えた「意味」があり、それを脳が無意識に判断しているらしい。特に影響するのは、商品特徴によってもたらされる結果=人に何をしてくれるのか、ということ。ベネフィットと言ってもいいだろう。

 

いい結果が出ないCMでよくあるケースは、(新しい)商品特徴を伝えることばかりに力を入れて、そこでCMが終わっているものだそうである。たしかにそれは新しい機能なのかもしれないけど・・・というような商品のCMなのだそうで。

 

商品特徴の伝達のみで終わらないようにするためにどうすればいいんだろう。なおも問うと、解決するのは「で?」だそうだ。この商品は、こんなに新しいんですよ、すばらしいんですよ。というCMの構成に対して「で?」と問いかけるとよいのだと。

 

「で?それは何をしてくれるの?」

 

という問いに答えられるCMであれば、見た人にとって意味のあるものとして脳が処理するのだそうだ。いわゆる自分ごと化ってやつだなあ、これ。脳の機能としてそれがあるのかあ。

 

さらに言えば、見る人にとっての意味、ということからすると、そもそも商品およびCMが対象としてる人(いわゆるターゲットですね)を明確にしてフィットするベネフィットを設定するってことだから、これは、クリエイティブブリーフ(CM制作のためのオリエン内容)が大切ってことだよね、という話になった。

 

昔入社したての頃に、マーケティングの基礎として、女性は口紅そのものではなくキレイになることを手に入れたいのだという話から「人は商品を買うのではない、期待を買うのである」というようなことを教えていただいた記憶があるのだが、そういう基礎的なことがやっぱり大事なんだなあ、と感心して、マーケ時代の先輩たちに感謝だなあとも思いました。

 

なお、演出によって映像のクオリティが上がることによってスコアが上昇することはあるそうなのでひと安心。逆に言うと、目は引くが感情や記憶の機能が働かないCMってのは骨格がしっかりしてないから肉付けしても効果が低いってことなんだね。

 

てなわけで、いいCMを作るにはまずいいクリエイティブブリーフから。クリエイティブディレクターはもちろん、広告会社のストプラやクライアントさんの責任も大きいのである。

 

・・・で?